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  サレジオ工業高等専門学校 機械電子工学科

 複合材料構造研究室(坂口研究室)



  Salesian Polytechnic Dept. of Mechanical and Electronic Engineering

  Composite Material Structures Laboratory




研究テーマ

現在,下記研究テーマでの研究を行っておりますが,必ずしも来年度も継続するものではありません.本研究室を希望する学生はあらかじめ相談してください.


1. 生体吸収性骨固定デバイスの力学的特性の向上

従来,骨折の治療にはステンレス鋼やバイタリウム(Co-Cr合金),チタン(Ti)などの金属材料を用いた金属製骨固定デバイスが用いられております.しかし,金属材料は骨折の治療後に除去する必要があることから骨折患者の負担となっています.そのため,骨固定デバイスの代替材料として体内において分解・吸収され,分解生成物が無害な生体吸収性プラスチックスの一つであるポリ乳酸(PLA)が注目されています.骨固定デバイスの材料には大きく分けて金属材料,セラミック材料,プラスチック材料の三種類が挙げられますがFig. 1に示すようにポリ乳酸を含むプラスチック材料は力学的特性が低いという問題点が挙げられます.そこで,本研究室ではFig. 2に示すように延伸による分子鎖の配向を用いて力学的特性を向上させる研究を行っています.

Fig. 1

Fig. 1 Relationship between elastic modulus and strength for metals, ceramics, polymers, bone and tooth.

Fig. 2

Fig. 2 Schematic view of stretch.


より具体的な内容として以下のテーマで研究を行っております.

1-1. リン酸三カルシウム(TCP)/ポリ乳酸(PLA)複合材料における界面処理及び延伸を用いたハイブリット強化手法に関する研究

ポリ乳酸は体内で分解・吸収される特性があるために,骨折の治療に使用する骨固定デバイスの材料として注目されています.しかしながら,(1)力学的特性が低いために適用部位が低負荷部位に限定,(2)骨の形成を促す骨伝導性がない,(3)X線を透過するため簡易な診察が困難といった問題点があります.そこで,生体吸収性セラミックス粒子として比較的分解速度の速いリン酸三カルシウムとの複合材料の適用が有力視されています.

このような,粒子分散複合材料の強度はセラミック粒子と母材樹脂間の弾性率の差によって界面の応力集中が生じるためにPLA単体と比較して低下することが報告されている.そこで,セラミック粒子表面に対して界面処理を施し,応力集中を抑制する機能性界面層の付与が研究されている.しかし,機能性界面層の付与だけでは母材樹脂の強度の回復に留まっている.そこで,本研究では界面処理を施したTCP粒子を用いたTCP/PLA複合材料に対して延伸による自己強化を施すことにより,力学的特性を向上させつつ,骨伝導性の付与やX線透過性の軽減を試みた自己強化完全生体吸収性プラスチックス複合材料(SR-PBPC : Self Reinforced - Perfectly Bioabsorbable Plastic Composites)製の骨固定デバイスを開発することを目的としています.

1-2. 押出型鍛造によるTCP/PLA複合スクリューの成形及び力学的特性評価

従来の延伸はFig. 2に示す様に単軸方向へ行うことによって,分子鎖を配向させることで,力学的特性を向上させていた.しかし,延伸した高分子材料の力学的特性は分子鎖の配向方向には向上するが,配向方向と直交する方向には低下する異方性を生じる問題点がある.また,製品として成形するためには延伸後に二次加工が必要となり,成形コストも増加する.そこで,高分子材料に対して様々な方向に変形を加える鍛造によって等方的に強化する研究がなされている.本研究では骨固定デバイスとして代表的なスクリュー形状に着目し,TCP/PLA複合材料に対してFig. 3に示すような押出型鍛造を施すことで力学的特性の向上及び成形工程の簡略化を目指している.また,鍛造における分子鎖の配向挙動をシミュレーションするためにFig. 4に示すような有限要素解析や分子鎖ネットワークモデルを組み合わせた解析的な評価を行っている.

Fig. 3

Fig. 3 Schematic view of extrusion die forging.

Fig. 4

Fig. 4 Contour view of the first principal plastic strain for extrusion at ER = 4.(Mechanical Engineering Journal, Vol. 6 (2019), p. 19-00346, https://doi.org/10.1299/mej.19-00346.)


2. 繊維樹脂界面強度の改善による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックス(CFRTP)の力学的特性の向上

航空機や自動車などの移動機器の燃費を向上させるために軽量化が求められています.軽量化するために構造材料として炭素繊維強化プラスチックス(CFRP)が注目を集めています.CFRPはFig. 5に示すような炭素繊維を強化材として使用し,母材であるプラスチックスを強化したものです (Fig. 6).従来はCFRPの母材として熱硬化性樹脂が用いられてきましたが,近年では価格が安く,リサイクル性や耐衝撃性にも優れる熱可塑性プラスチックスを用いた熱可塑性炭素繊維強化プラスチックス(CFRTP)が注目されています.一方で,CFRTPは母材樹脂と繊維の間の含浸性や接着性が低いために炭素繊維の力学的特性が十分に発現できていない問題点があります.そこで,本研究室ではこれら繊維樹脂界面強度を向上させる調査を行っています.

Fig. 5

Fig. 5 Plain woven carbon fibers.


Fig. 6

Fig. 6 Cross section of plain woven carbon fiber reinforced plastics.


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