近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


図4 サイリスタコンバータの出力電圧波形

 近年,国内外で積極的に研究開発が進められている新エネルギー発電のひとつとして,洋上風力発電があげられる。洋上においては直流送電系統が有利であることから,これらを組み合わせたシステムが提案されている(図1)。また,一般に風力発電においては発電装置から高い効率で電力を得るために,風力タービンの最大効率を追従する制御が必要となる。
 本研究では,直流送電系統に直列接続された風力発電システムの出力制御装置の開発並びに動作実験を行う。




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 本研究では洋上風力発電装置の出力制御装置を製作した。また,動作実験を行い,中性線の無い発電機においても波形整形回路による波形改善,位相制御による出力制御の動作の行えることが確認できた。今後残された課題として,風力発電装置の最大電力追従制御などがあげられる。

図2 出力制御装置構成

実験結果を踏まえて試作一号機を製作した。
供試装置からの改善点として
・マグナス効果を増大させるために
 ブレードを三本に増やし,
 ブレードの径を大きくした。(図5)
・内部シャフトの損失をなくすために,
 ブレード駆動用モータを防水加工し下部に配置した。

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 図2に本システムの構成を示す。本システムには信頼性の高いサイリスタコンバータが用いられている。これにより,風力発電装置から得られる交流を直流に変換するとともに位相制御によって出力電圧の大きさを可変することができる。

図1 提案する洋上風力発電システム

 同コンバータのサイリスタゲートパルス信号は入力線間電圧波形のゼロクロス点を基準に発生させる必要があるが,発電機に漏れリアクタンスが存在する場合,入力電圧波形には跳躍や陥没が現れるため正確なゼロクロス点の検出が出来ない問題がある。一般に波形整形回路と呼ばれる装置により,各相電圧のひずみを補間して正弦波電圧を得る方法が用いられているが,本研究対象の風力発電機には中性線が引き出されていないため,相電圧を用いる波形整形回路を使用できない。
 そこで,本研究では新たに線間電圧を用いた波形整形回路の提案並びに製作を行った。図3に波形整形回路の入力Δ電圧信号,入力Δ電流信号,出力線間電圧信号の波形を示す。
 図3より,中性線の得られない場合においても,新たに提案した波形整形回路の働きにより,跳躍や陥没が低減され,線間電圧のゼロクロス点の検出が可能となることがわかる。次いで,製作したサイリスタコンバータの動作実験を行った。図4にサイリスタコンバータの出力電圧波形を示す。図中左の波形は制御角をゼロとした場合のものである。また,右の波形より,位相制御が正確に行われていることがわかる。

図3 波形整形回路の入出力信号