近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 
はじめに

日本は島国であるため、広大な排他的経済水域を有しているが、海洋再生可能エネルギーの利用は他の国よりも遅れており、波力発電においてはほとんど導入されていないのが現状である。本研究室では、波力発電装置としてマグナス効果を利用して駆動するマグナス波力発電装置の開発を行っている。本研究では、同発電装置のブレード回転機構に関する検討を行う。

 
図1にマグナス効果の概念図を示す。マグナス効果とは、一様な流体中におかれた回転体に回転方向に従った揚力が発生する現象である。図2にマグナス効果を用いた波力発電装置の構成を示す(図は波が上昇している場合)。同発電装置は、自転する円筒型のブレード(マグナスブレード)を有し、波の上下運動により生じた水流によってタービンが駆動する発電装置である。波は反復運動であるため、ブレードに流入する水流の向きは時々刻々と変化するが、これに合わせてブレードの自転方向を変えることにより、タービンを常に一定方向に回転させることができる。これまでの検討では、マグナスブレードの回転速度・回転方向を電動機の制御によって実現してきたが、機構が複雑になる問題がある。
本研究では簡易で堅牢な機械式のマグナスブレード回転機構を提案する。
図1. マグナス効果
図2.マグナス波力発電装置
 

 図3に提案するディスククラッチ式回転機構の構成・原理を示す。同装置は、海上の浮体部、タービンの回転を発電機に伝達するメインシャフト、上下にスライドするレールを介してメインシャフトに取り付けられたマグナスブレード、浮体部に固定され、メインシャフト回転時にマグナスブレードに摩擦トルクを与える2枚のディスククラッチ(マグナスブレード上下にそれぞれ設置される)などで構成される。以下、動作原理につて説明する。システム本体が波の力で上昇/下降すると、これによる水流がマグナスブレードに作用し、上部または下部のディスククラッチにマグナスブレードのシャフト部が接触することとなる。この状態でメインシャフトが回転すると、マグナスブレードのシャフト、ディスククラッチ間に摩擦が発生するため、マグナスブレードが自転し、マグナス効果による揚力が発生する。自転の方向は水流の向きにより自動的に反転するため、マグナス効果による揚力はタービンを常に一定方向に回転させることとなる。

 
図3.ディスククラッチ式回転機構の構成
 提案する回転機構の有用性を確かめる為、実際に装置を製作した。図4に製作した供試マグナスタービンを示す。同供試装置は浮体部や発電機を省略し、代わりに水中で装置に上下運動を与えるためのハンドルを取り付けてある。
 同装置を用いて動作実験を行った結果、水中でマグナス効果による揚力を得ることができたが、水流の向きが切り替わる点で、運転を継続できない問題のあることがわかった。これは、供試装置が発電機などを持たないため、タービンの慣性力が小さく水流が切り替わる点でタービンの回転を維持できないことが原因であると考える。
図4.ディスククラッチ式回転機構を持つ供試装置
おわりに

マグナス効果により駆動するマグナス波力発電装置のブレード回転機構について検討を行い、ディスククラッチ式の回転機構を提案した。また、供試装置を製作し、動作実験を行ったところ水流反転時に動作を維持できない問題のあることなどが分かった。これらについてはさらなる改良を加える必要がある。




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