近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


はじめに
近年、風力発電システムはそのフィールドを陸上から洋上に拡大しつつあり、長距離送電に有利な直流送電システムを用いたものが実用化されている。こうしたシステムの多くは、ウィンドファームの電力を一旦、洋上サブステーションに集電し、直流に変換して陸上に送電する方式をとる。これに対し、洋上サブステーションを用いない次世代のシステムとして、風力発電装置を直流送電線上で直列接続する方式が提案されている[1]。同システムの風力発電機としては現在主流となっている永久磁石同期発電機や巻線形の同期発電機などが考えられるが、自励式の巻線形同期発電機は励磁電流の調節により発電機の出力電圧を制御できるため、同システムの風力発電機としては有力な候補になりうると考えられる。本研究では、直列接続方式の風力発電システムの風力発電機として自励式同期発電機を用いた場合の動作範囲について検討を行う

1に直列接続方式の風力発電システムの風力発電装置部の構成を示す。同図の風力発電機は励磁用のサイリスタ整流器を有する自励式の同期発電機であり、堅牢で信頼性の高いダイオード整流器を介して直流送電系統に接続される。本システムは図1発電装置を直列接続する構成となっており、風速Vwindによらずほぼ一定に制御される直流送電電流Idに対し、発電装置の直流側電圧Vdを制御することにより風力タービンの効率(出力係数Cp)を最大の値に保つことができる。Vdはサイリスタ整流器の制御角αの調整により制御できるが、そのためには発電機の励磁電流を所望の値に維持する必要があり、これによって発電機の動作範囲が決定される。

図1. 直列接続方式風力発電システムの発電装置部
 

風速Vwindに対し出力係数Cpを最大に保つためには発電機の励磁電流を適切な値に制御する必要がある。そこで、実際の運用を想定し、直流送電電流Idを定格値に維持したままCpを最大値とすることを条件に供試装置2kW)を用いた実験を行った。実験では定格風速11.5[m/s]タービン半径1.29[m]、出力係数最大値0.4の風車を模擬し、Idの定格値は7.4[A]とした。図2は実験結果の一例で、風速を、10.5[m/s]、7.0[m/s]とした場合の発電機出力線間電圧並びに電気子電流の瞬時波形を示したものである。同図より、風速が低下すると発電機の電圧波形ひずみが増大することがわかる


(a)風速10.5m/s                  (b)風速7.0m/s
図2 発電機出力線間電圧波形と電機子電流波形
おわりに

直列接続方式の風力発電システムにおいて自励式巻線形同期発電機を風力発電機として用いた場合の動作範囲について実験的検討を行った。その結果、低風速域では発電機の転流リアクタンスに基因する電圧波形ひずみの影響により、励磁電流を維持できなくなる可能性のあることが明らかとなった。




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