近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 
はじめに

 近年、先進国を中心にいわゆる「理科離れ」と呼ばれる現象が起きている。これに対して、各国は理数系教育の充実に重点を置き、科学技術分野の人材育成に力を注いでいる。日本でも同様な現象が起きており、2018年に発表された「2016年の論文数」において日本は世界ランキング3位(2016年発表)から6位に落ちている。論文数が減少傾向にあるのは先進国では日本だけであることから、早急に対応しなければならない問題であると考えられる。我々が専攻する「電気工学」の分野においても同様の傾向があり、工学教育の分野において、より効果のある教育法が提案されるなど、様々な工夫がなされている。先行研究で提案された「直流回路計算カードゲーム」は電気工学の基礎となる直流回路の計算に対する意欲向上、計算能力向上を目的としたカードゲームであり、同教材による一定の学習効果が確認されている本研究では、電気工学を学ぶ上で直流回路よりも計算が複雑になる「交流回路の計算」の習得を目的に先行研究で開発された「直流回路計算カードゲーム」を拡張した教材を開発する。

 

 提案する教材は交流回路計算の基礎となる電圧・電流の大きさと位相の関係を理解させ、インピーダンスや有効電力の計算を習得できるものとした。また、学習者の苦手意識を調査し、楽しみながら習得してもらいたい項目として次の5つを設定した。
 ① 種々な方法で有効電力の計算ができる。
 ② 
リアクタンスXは電気角周波数ωを含んでおり周波数で変化することを理解できる。
 
 直列共振の減少を理解できる。
 
 電力が周波数によって変化することを理解できる。
 ⑤ 
計算に実効値を用いることを理解できる。

 以上の目標をもとに開発したカードゲームを図1に示す。学習者は互いに山札からカードを引き、手札より電源カード、抵抗カードを組み合わせて自分の場に電気回路を構築する。攻撃カードを使用することにより、構築した回路の有効電力を対戦相手の最大電力(同値が0になると負けとなる)から引くことができる。攻撃された相手はコイルカードやコンデンサカード等を攻撃側が構築した回路に組み込み、力率低下などを利用してダメージとなる有効電力を減らすことができる。同教材は個人戦だけでなく、チーム戦も行うことができ、計算に不慣れな学習者はチームを組むことにより、楽しみながら学習することができる。

図1. 開発した交流回路計算カードゲーム

 教材の学習効果を検証するため、学習者(交流回路を学び始めたばかりの高専の2年生)を対象にテスト形式のアンケート調査を実施した。得られた結果の一例を図2に示す。同図はカードゲーム実施後に問題を解けるようになった学生の割合を示したものであり、いずれの問題においても正解者数が上昇傾向にあることが分かる。また、実効値や有効電力の計算に特に効果のあることが分かった。

図2.カードゲーム実施前後の正解者数の推移
おわりに
 本研究では「交流回路の計算」の習得を目的とした教材を開発し、教育効果を検証した。その結果、短期間でも一定の成果が得られたことから、繰り返し学習することにより、大きな教育成果を期待できることなどが明らかになった。



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