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JABEEへの取組|サレジオ高専 公式サイト
Efforts to JABEEJABEEへの取組

JABEEの目的や本校教育プログラムの目標などを紹介します。

修了生のメリット

修了生は、その修了が技術士第一次試験の合格と同等であると見なされ、技術士補となる資格が得られます。その後、(1)技術士補として登録し指導技術士の下で4年以上の実務経験を積むか、(2)優れた指導技術者の監督下で4年以上の実務経験を積むか、(3)7年以上の実務経験を積めば、技術士になるための技術士第二次試験を受験することができます。

(1)JABEEの目的

日本技術者教育認定機構(JABEE : Japan Accreditation Board for Engineering Education、1999年11月19日設立)は、教育の質を高めることを通じてわが国の技術者教育の国際的な同等性を確保し、国際的に通用する技術者育成の基盤を担うことを通じて社会と産業の発展に寄与することを目的として、技術者教育プログラムの審査・認定を行う非政府団体です。

JABEEは、高等教育機関における技術者教育プログラムを認定するために、次の認定基準を設けて、根拠となる資料審査や実地審査を行います。

基準1
学習・教育到達目標の設定と公開
基準2
教育手段
基準3
学習・教育到達目標の達成
基準4
教育改善

JABEEの審査によって認定された教育プログラムを修了した修了生は、国際的に通用する技術者として認められます。 →「修了生のメリット」

(2)「生産システム工学」教育プログラム

今日のものつくりには地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養が必要です。また、技術者には作られたものが社会や自然にどのように影響を及ぼすか、また、その効果についても考える能力が求められています。

これに応えるために、本校では、準学士課程の4年次から専攻科2年次までの一貫教育プログラム「生産システム工学」を設定し、国際化にも対応できる技術者教育を実施しています。

本プログラムは、最も得意とする専門分野の知識と能力を身につけ、さらに異なる技術分野を理解し、それらの分野の知識を複合融合させる能力を身につけることを目的としています。具体的には、準学士課程で開設されている機械電子工学、電気工学、情報工学の1つの専門分野を学習し、さらに他専門分野の科目も学習します。

本プログラムが世界に通ずる技術者教育であることを認めてもらうため、平成26年度にJABEEの審査を受ける予定です。受審分野は「工学(融合複合・新領域)関連分野」です。

(3)育成する技術者像と学習・教育到達目標

本校では設立の当初から、創立者ヨハネ・ボスコの精神に基づき、キリスト教精神に基づく人間観を持った善き職業人を養成することを目標としています。キリスト教精神とは、忍耐、寛容、ゆるし、謙遜、誠実を意味しています。

それは技術を通して人類社会に貢献できる人間を育てることであり、 社会の華やかな舞台だけではなく、聖書の言葉である「地の塩・世の光」に象徴される見えないところで大地を支える岩塩のように、あるいは周りを照らす灯台の光のように、社会を支え、人々を幸せにする技術者になることを勧めています。

この本校の伝統に基づき、次に示す(A)〜(D)の4つの技術者像と、各々の像について、それを達成するための学習・教育到達目標を定めています。

技術者像(A)

健全な身体と精神を培い、使命感と奉仕の精神を養い、幅広い教養の元に多面的に物事をとらえ、技術者としての使命を自覚し、実行しうる技術者

達成するための学習・教育到達目標(A-1)〜(A-5)
  • (A-1)健康や身体についての理解を深めるとともに、スポーツの実践を通して心身の調和的な発育・発達を促し、健康な心身を培うことができる
  • (A-2)過去の文芸作品や現在の様々な書籍を通して、人々の生活を見つめ、他者の心を理解し、自分の考えを深め、豊かな人間性を培うことができる
  • (A-3)近現代の社会と技術を理解するために、その成り立ちの基盤である日本と世界の歴史を学習し、それらの基礎的事項を把握する
  • (A-4)我が国の文化や歴史の理解とともに他国の文化も認識し、技術に関係する過去の事故等の検討を通して、社会的な責任と使命(技術者倫理)について理解できる
  • (A-5)自然環境と社会との関係に関する基礎的な事項を理解でき、常に使い手の立場に立ったものつくりができる

技術者像(B)

自らの専門とする科学技術について、その基礎理論および原理を理解し、それらを問題解決に応用できる能力を備えた技術者

達成するための学習・教育到達目標(B-1)〜(B-4)
  • (B-1)数学、自然科学および情報技術に関する基礎知識を身につけ、それらを用いて応用問題に挑戦できる
  • (B-2)自分の専攻した専門分野の基礎知識を身につけ、それらを用いて工学的な現象が理解できる
  • (B-3)異なる技術分野を理解し、自分の専攻した専門分野の知識と複合する能力を身につける
  • (B-4)実験・実習を通して、実際の工学的現象を理解し、実践的技術を身につけ、問題解決に応用できる

技術者像(C)

コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を身につけた技術者

達成するための学習・教育到達目標(C-1) 〜(C-3)
  • (C-1)国語表現の技法を身につけるとともに、語彙力を高め、場面や状況に応じた言葉、文章、図表などで表現、記述でき、効果的なコミュニケーションができる能力を身につける
  • (C-2)コンピュータや情報ツールを使いこなし、情報処理、情報収集等やプレゼンテーションができる
  • (C-3)国際的に通用するコミュニケーションの基礎力、特に英語力を身につけ、生活文化の固有性や多様な価値観のあることを理解できる

技術者像(D)

技術的課題を分析し、解決するためのシステムをデザインする能力を持った技術者

達成するための学習・教育到達目標(D-1)〜(D-3)
  • (D-1)自律的に新たなことにチャレンジする心(プロダクトマインド)を育成し、問題解決のために習得した専門知識を応用できる
  • (D-2)問題解決のための計画・実行方法の立案、得られた結果の考察および整理ができる
  • (D-3)実験・実習、卒業研究、特別研究科目の修得を通して、自主的、継続的に学習し、他人と協調して実行できる

(4)JABEE基準1の要件と学習・教育到達目標との関連

本プログラムの学習・教育到達目標は、JABEE基準1の要件(a)〜(i)の各内容を満たすように具体化したものです。
以下に、各要件と学習・教育到達目標との関連を説明します。

要件(a):地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養

学習・教育到達目標(A-2)により、過去の文芸作品や現在の様々な書籍を通して、人々の生活を見つめ、他者の心を理解し、自分の考えを深めることは技術以外の分野も幅広く知ることになり、このことにより社会や環境を含めて地球的視点から多面的に物事を捉える能力が養われていきます。

また学習・教育到達目標(A-3)により、世界の歴史を学び、様々な事例を学習することで、地球的視点から過去や将来を踏まえて物事を考えることができるようになり、多面的に物事を考える能力とその素養が身につきます。

さらに学習・教育到達目標(A-3)により、多面的に物事を考えるために必要なことの1つとして、あらゆる事態を想定して考えることが有効であり、過去の技術に関する事故等の検討は、これらの能力の涵養につながります。

要件(b):技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、及び技術者が社会に対して負っている責任に関する理解

学習・教育到達目標(A-3)により、近現代の社会と技術の成り立ちの基盤である日本と世界の歴史を学習することで、技術が社会や自然に及ぼす影響や効果を知り、ひいては技術者の社会的責任を理解することができるようになります。

また学習・教育到達目標(A-4)により、自国ならびに他国の歴史や文化を学び、とりわけ技術に関する過去の事故等の事例も学ぶことで、技術が社会や自然に対する影響や効果を理解することができ、ひいては技術者の社会的責任についての理解も深まります。

さらに学習・教育到達目標(A-5)により、自然環境と社会との関係に関する基礎的事項を理解し、常に使い手の立場に立ったものつくりができれば、自ずと技術が及ぼす社会や自然への影響や効果が理解でき、技術者の社会的責任を認識できるようになります。

要件(c):数学及び自然科学に関する知識とそれらを応用する能力

学習・教育到達目標(B-1)により、数学、自然科学および情報技術に関する基礎知識を身につけ、それらを用いて応用問題に挑戦していけば、自ずと応用能力が身についてきます。

要件(d):当該分野において必要とされる専門的知識とそれらを応用する能力

工学(融合複合・新領域)及び関連のエンジニアリング分野における「専門的知識とそれらを応用する能力」(水準を含む)として、以下の(1)〜(4)が要求されています。

(1) 専門工学の知識と能力:

学習・教育到達目標(B-2)により、自分の専攻した専門分野の基礎知識を身につけ、それらを用いて工学的な現象が理解できるようになれば、自ずと専門工学の知識と能力は身につきます。

(2) いくつかの工学の基礎的な知識・技術を駆使して実験を計画・遂行し、データを正確に解析し、工学的に考察し、かつ説明・説得する能力:

学習・教育到達目標(B-4)により、実際の工学的現象を理解し、実践的技術を身につけ問題解決に応用していく実験・実習の学習を通して、工学の基礎的な知識・技術を駆使して実験を計画・遂行し、データを正確に解析し、工学的に考察し、かつ説明・説得する能力が養われます。

(3) 工学の基礎的な知識・技術を統合し、創造性を発揮して課題を探求し、組み立て、解決する能力:

学習・教育到達目標(B-3)により、異なる技術分野を理解し、自分の専攻した専門分野の知識と複合する能力を身につけることで、創造性を発揮して課題を探求し、組み立て、解決する能力が養われます。

(4) (工学)技術者が経験する実務上の問題点と課題を解決し、適切に対応する基礎的な能力:

学習・教育到達目標(D-1)により、プロダクトマインドを育成し、問題解決のために習得した専門知識を応用する学習により、(工学)技術者が経験する実務上の問題点と課題を解決し、適切に対応する基礎的な能力が養われます。

要件(e):種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決するためのデザイン能力

学習・教育到達目標(D-1)により、問題解決のために習得した専門知識を応用できる学習の中で、種々の科学、技術及び情報を活用すれば、社会の要求を解決するためのデザイン能力の向上に資することができます。

また学習・教育到達目標(A-5)により、自然環境と社会との関係に関する基礎的事項を理解し、その制約条件を考慮したものつくりをすることができれば、社会の要求を解決するためのデザイン能力が身につきます。

要件(f):論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力

学習・教育到達目標(C-1)により、国語表現力を高め、場面や状況に応じて言葉、文章、図表などを使って効果的なコミュニケーションを身につける学習を通して、論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力が養われます。

また学習・教育到達目標(C-2)により、コンピュータや情報ツールを使いこなし、情報処理、情報収集等ができるようになれば、コミュニケーション能力の向上に資することができます。

さらに学習・教育到達目標(C-3)により、国際的に通用するコミュニケーションの基礎力、特に英語力を身につけ、生活文化の固有性や多様な価値観のあることを理解できるようになれば、コミュニケーション能力の幅を広げることに資することができます。

要件(g):自主的、継続的に学習する能力

学習・教育到達目標(D-3)により、高専特有の低学年からある毎週の実験・実習、本科5年次の卒業研究、そして専攻科2年間にわたる特別研究の修得は、自主的、継続的に学習する能力を養う。

また学習・教育到達目標(D-1)により、問題解決のために習得した専門知識を応用できる学習は、自主的、継続的に続けなければ身につかず、これらの能力の養成につながります。

要件(h):与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力

学習・教育到達目標(D-2)により、問題解決のための計画・実行方法の立案、得られた結果の考察および整理を通して、PDCAサイクルが経験でき、与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力の養成につながります。

要件(i):チームで仕事をするための能力

学習・教育到達目標(A-1)により、健康な体や健全な精神は、仕事をする上で全ての基本ですが、とりわけチームで仕事をする場合に必要となる資質です。また団体競技を中心としたスポーツの実践を通して、チームワークの重要性を学ぶことができ、チームで仕事をする能力が養われます。

また学習・教育到達目標(D-3)により、実験・実習、卒業研究、特別研究では、目的を明らかにし、計画立案し、実行した後の分析・解析さらには再実験などの過程で、他者との議論やチームを組んで取り組みことが多くなります。このような経験を通して、チームで仕事をするための能力が養われます。

以上のJABEE要件(a)〜(i)と学習・教育到達目標との関係性を表1にまとめて示します。

また各々の学習・教育到達目標から見たときのJABEE要件(a)〜(i)との関連性について、別表1に示します。

全てのJABEE要件(a)〜(i)と本プログラムの学習・教育到達目標とが関連づけられていることが分かります。このことから、本プログラムはJABEE要件を具体化したものであると言えます。

(5)「生産システムエ学」教育プログラム履修学生の決定

本校の「生産システムエ学」教育プログラムは、電気工学科、機械電子工学科及び情報工学科準学士課程の4・5年次必修科目(選択必修科目を含む)と専攻科の開講科目から構成されています。したがって、教育プログラムは準学士課程の4年次から始まりますが、教育プログラム履修者の決定は本校専攻科に入学した時点となり、専攻科学生は全員が「生産システムエ学」教育プログラムの履修者となります。

本校専攻科に入学するためには、入学前に本校準学士課程(電気工学科、機械電子工学科および情報工学科)の4・5年次の教育と同等な内容の教育を受けている必要があります。そのため本校専攻科に入学する前に、この点についての審査があります。

(6)「生産システム工学」教育プログラムの修了要件

本校における「生産システムエ学」教育プログラムを修了するためには、以下に挙げる4つの修了要件を全て満たすことが必要です。

生産システムエ学修了要件[1]:
本校専攻科の課程を修了し、学位(学士)を取得していること。

本校専攻科の修了要件は、「専攻科において62単位以上を習得すること」です。この62単位には必修科目、選択科目および他大学等での履修科目が含まれますが、「必修科目26単位と選択科目30単位以上」は必ず含まれていなければなりません。

生産システム工学修了要件[2]:
「生産システムエ学」教育プログラムにおいて、履修の手引「5.科目構成」に挙げられた科目で124単位以上修得していること。

本プログラムの課程、すなわち準学士課程4年~専攻科2年の4年間で、124単位以上修得しなければなりません。既述のように専攻科で62単位以上を修得するので、残りの単位は準学士課程4・5年で修得します。準学士課程4・5年生は、この要件に留意しながら単位を修得して下さい。専攻科1・2年生は、自身が4・5年で修得した単位数を確認して下さい。

生産システム工学修了要件[3]:
履修の手引「5.科目構成」における(3)主たる専攻分野(準学士課程で専攻した専門分野)に関する科目および他分野(主たる専攻分野と異なる分野)に関する科目のうち、他分野に関する科目を修得していること。

この要件は、本校専攻科の「T字教育」を実践し、複合領域の知識を得るためのものです。この要件に十分留意して専攻科の選択必修科目を履修して下さい。また、他分野に関する科目として履修する学生に対しては、担当教員より自己学習の内容について指示があるので、臆することなく安心して履修してください。

生産システムエ学修了要件[4]:
履修の手引「5.科目構成」における(3)基礎工学の知識・能力科目には、(3-1)設計・システム系科目群、(3-2)情報・論理系科目群、(3-3)材料・バイオ系科目群、(3-4)力学系科目群、(3-5)社会技術系科目群の5科目群があるが、各科目群から少なくとも1科目、合計6科目以上を修得していること。

この要件は、複合領域の知識を得るためのものです。この要件に十分留意して専攻科の選択必修科目を履修して下さい。

(参考) 本校の沿革と「生産システム工学」教育プログラムへの取り組み

1963年に「育英高等専門学校」が設立され、その中に電気工学科、印刷工学科、工業意匠学科の3学科を設置した。

1967年に校名を「育英工業高等専門学校」に改称した。

学生数の増加に伴い電気工学科の中に電気工学コース、電子工学コース、情報工学コースの3コースを設けたが、更なる学生数の増加に伴い1990年に電気工学科から分離する形で、新たに電子工学科と情報工学科を設置し、5学科体制とした。

2001年に専攻科「生産システム工学」専攻を設置した。

2005年に東京都杉並区より町田市に移転し、電気工学科、電子工学科、情報工学科、デザイン学科の4学科体制とし、校名も「サレジオ工業高等専門学校」と改称した。

2008年には、電子制御技術の進展を取り入れたメカトロニクス教育を行っている実態に合わせるため、電子工学科を機械電子工学科に改称し現在に至る。

JABEEについては、育成する技術者像と「生産システム工学」教育プログラムを2010年4月に制定し、2011年度からこの教育プログラムを始動した。

これに先立ち、一期生となる対象学生には前年度11月にプログラムの説明を行い(当時本科3年生)、教職員を含めて公開した。この一期目の学生が、2014年度の専攻科修了(予定)生である。

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