近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
A Tip Speed Ratio Control for a Wind Turbine Generator Connected to a DC Transmission System
 
 
研究背景・目的
 近年,環境問題や化石燃料の枯渇問題等を背景に風力や太陽光など様々な再生可能エネルギーに注目が集まっている。しかしながら,こうした再生可能エネルギーには変動が大きい,密度が小さいなどの問題がある。これらを解決する一つの方法として,複数台の風力発電装置で構成されるウィンドファームなどがあげられる。筆者らは複数台の風力発電装置を直流送電系統に直列接続させる方式を提案し,同システムの種々な検討を行ってきた。図1に提案するシステムの風力発電装置部分の構成を示す。本システムは図示の様に永久磁石同期発電機,サイリスタコンバータなどで構成されており,コンバータの制御角αdwを調整することにより,発電機の負荷を制御することができる。本研究では,サイリスタコンバータを用いた提案システムの周速比一定制御に関する実験的検討を行う。
 
 
 図1. 提案するシステムの風力発電装置部分の構成
 
 風力発電装置の周速比一定制御

 風力発電の効率を表す出力係数Cpは周速比λに大きく依存する。したがって,最大電力追従制御を行うためには出力係数が最大値となる最適な周速比λopを指令値とした閉ループ制御系を構築すればよい。図2に周速比一定制御を行うために必要な閉ループ制御系を示す。本制御系は図示の様に実測した周速比λとλopとの偏差によりサイリスタコンバータの制御角αdwを調整し,風力発電装置の周速比一定制御を行うものである。

 
 
 図2. 周速比一定制御の閉ループ制御系
 

 図3に風力発電装置(10kWRb = 2.4m)を用いて実際に周速比一定制御を行った場合の風速Vw,周速比λ,制御角αdwの過渡応答実測値を示す。なお,本実験ではサイリスタコンバータの負荷に純抵抗負荷を用いた。同図より,風速が図示の様に変化すると周速比が大幅に変動することとなるが,周速比がλopを超えると制御角が減少し,λopを下回ると制御角が増加することにより,コンバータの直流電圧を調整し,風力発電機に適切な負荷が与えられていることがわかる。また,カットイン風速以下でαdwが90度となることから同システムを直流送電系統に接続した場合において,風車が起動しない場合にも運用可能であると考えられる。

 
 
 図3. 提案システムの過渡応答実測値
 
 むすび
  本研究では直流送電系統に接続される風力発電装置の周速比一定制御について,供試装置による実験的検討を行った。その結果、サイリスタコンバータの制御角を用いた本制御法は提案するシステムに有用であることがわかった。
 



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