近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 洋上風力発電装置の電力補償装置に関する検討
Considerations of a Power Compensation System for an Offshore Wind Turbine Generating System
 
 
研究背景・目的
 
 近年、風力発電装置の大型化やより安定した風力を得られること等から、洋上に風車を設置する洋上風力発電が期待されている。筆者らは、洋上において有利な直流送電を利用した風力発電システムについて種々な検討を行っている。本研究では、直流送電を用いた風力発電システムを対象に、風速の変化に伴う電力変動を抑制するだけでなく、インバータ等の電力変換装置によって発生する高調波を除去することのできる電力補償装置を提案し、同電力補償装置に関する様々な検討を行っている。図1に同装置を有する直流送電システムの受電端回路と3次巻線(同期機側)の漏れインダクタンスが負となるように設計した三巻線変圧器(1相分)の構成を示す。同装置は提案する特殊三巻線変圧器とダンパ巻線を有する同期機等で構成されており、同期機の初期過渡インダクタンスを負の漏れインダクタンスで打ち消すことにより、変圧器の励磁回路を正弦波となる同期機の内部誘導起電力によって直接励磁することができる。これにより、インバータで発生した高調波電流は同期機のみに流入し、系統側(2次側)には高調波ひずみの無い高品質な電力の供給が可能となる。
 これまでに、提案する特殊三巻線変圧器の2次巻線に純抵抗負荷を接続した場合の実験的検討を行い、同装置の波形改善効果を確認した。本稿では、特殊三巻線変圧器の2次巻線に受電端系統を接続した場合の提案装置の波形改善効果について検討する。
 
 
 図1. 提案する電力補償装置と三巻線変圧器
 
 受電端系統連系時の波形改善効果

 図2に系統連系実験により得られた、特殊三巻線変圧器各部の線間電圧波形並びに電流波形を示す。同図(a)には、供試三巻線変圧器の1次~3次巻線(図1(a)のP、S、T)の線間電圧波形、図(b)には、電流波形が示してある。また、同図には実験により得られた実測波形だけでなく、シミュレーションによる理論波形も示してある。実験条件については、同図(a)の上部に示す通りである。図2(b)より、1次巻線(P)と3次巻線(T)の電流波形には高調波が表れているが、2次巻線(S)の電流波形は高調波ひずみの無い正弦波となっていることがわかる。このことから、提案する三巻線変圧器の2次巻線に受電端系統が接続された場合においても、提案装置の波形改善効果が得られることが判明した。

 
 
 (a) 供試三巻線変圧器各部の線間電圧波形
 
 
(b) 供試三巻線変圧器各部の電流波形 
 図3. 特殊三巻線変圧器の波形改善効果
 
 むすび
  本稿では、高調波除去を可能とする電力補償装置の有用性を確認するための実験的検討の一つとして、特殊三巻線変圧器の2次巻線に受電端系統を接続した場合の提案装置の波形改善効果について検討を行った。その結果、系統連系時においても、提案する電力補償装置の波形改善効果が得られることが明らかとなった。
 



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