近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
A Tip Speed Ratio Control for a Wind Turbine Generator Connected to a DC Transmission System
 
 
直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
 現在,地球温暖化や化石燃料の枯渇など種々な問題を背景に,再生可能エネルギーを利用した発電方法が注目されている。なかでも風力発電は国内外で多くの研究が行われている。図1に風力発電装置を有する直流送電システムの構成を示す。同システムは,サイリスタコンバータ/インバータを用いて電力変換を行うため,高い信頼性を有する反面,サイリスタの転流に基因した高調波が発生してしまう問題がある。本研究室では,特殊三巻線変圧器を用いた高調波除去を可能とする電力補償装置を提案し,同装置による受電端側回路における高調波除去について検討している。本研究では,同装置を送電端側回路に接続した場合の波形改善効果について検討を行う。
 
 
 図1. 風力発電装置を有する直流送電システム
 
 直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
 図2は図1のシステムを想定した供試装置(同期機:2[kW],200[V],50[Hz],1500[rpm])を用いた場合の三巻線変圧器各部の電流波形(制御遅れ角α=45[deg])を示したものである。サイリスタコンバータへ流入する電流にはサイリスタの転流に基因して同図(c)のように高調波が含まれている。その結果,同期機(同図(b))だけでなく,系統(同図(a))の電流波形にも高調波が含まれていることがわかる。こうした高調波を除去する方法として,筆者らは特殊三巻線変圧器を有する電力補償装置を提案している。同変圧器は負の値となる漏れインダクタンスを有している。この負の漏れインダクタンスで同期機の初期過渡インダクタンスを打ち消すことにより,正弦波となる同期機の内部誘導起電力を変圧器の励磁回路に直接印加することができる。その結果,系統電流を正弦波とすることができる。
 
 
 図2. 送電端側回路各部の電流波形(従来方式)
 
直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
 前章で述べた波形改善効果が実際に得られるかを確認するため実験的検討を行った。図3はその結果(制御遅れ角α=45[deg])である。同期機の電機子電流(同図(b))とサイリスタコンバータへの流入電流(同図(c))は図2と同様に高調波が含まれていることがわかる。これに対し,系統電流(同図(a))の波形は高調波を殆ど含まない正弦波となっていることがわかる。また,サイリスタコンバータの制御遅れ角αを変化させた場合においても同様な結果の得られることがわかった。
 
 
 図3. 送電端側回路各部の電流波形(提案方式)
 
 直流送電系統に直列接続される風力発電装置の周速比一定制御
 本研究では,風力発電装置を有する直流送電システムの送電端側回路に特殊三巻線変圧器を有する電力補償装置を接続した場合の波形改善効果について検討を行った。その結果,受電端側回路と同様に,送電端側回路においても同装置が有用であることが明らかとなった。
 



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