近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 

 

近年、長距離送電に有利な直流送電を用いた洋上風力発電装置に関する研究開発が活発に行われている。本研究室では、風力発電装置を直列接続して運用する多端子直流送電システムが提案されており、種々な検討が行われている。提案システムの構成例を図1に示す。同システムは、サイリスタ変換器を介して風力発電装置及び各交流系統を直列接続して構成されている。同システムで用いるサイリスタ変換器は、高い信頼性を有する反面、サイリスタの転流に基因した高調波電流が電力系統に流入する問題がある。この問題を解決する方法として、高調波発生の原因である同期機の漏れインダクタンスを打ち消す特殊変圧器(6パルス方式のサイリスタ変換器の場合は三巻線変圧器)が先行研究により提案され、同方式の有用性が明らかとなっている。一方、大容量化及び直流送電部の電流脈動低減の観点から、本システムは12パルスサイリスタ変換器を用いて運用することが多くなると予想されている。そこで、12パルス方式の多端子直流送電システムに特殊変圧器を応用する方法について検討を行う。

図1. 12パルス方式の提案システム構成
 

2はサイリスタインバータの出力線間電圧波形(a), 同期機の出力線間電圧波形(b),受電端系統の出力線間電圧波形(c)の一例である。なお、今回は電圧波形の高騰はひずみについて検討を行うため、特殊変圧器の受電端系統側には純抵抗負荷を接続している。同図の(a)(b)の電圧波形には高調波成分が含まれているが、(c)の電圧波形は特殊変圧器の高調波除去効果により、ほぼ正弦波となっていることがわかる(THD5%以下)。また、理論値と実測値はよく一致しており、使用したシミュレーションモデルの妥当性を確認できる。

図2. 提案システムの出力線間電圧波形
 近年、環境問題を背景に再生可能エネルギーを利用した発電方法が注目されている。なかでも風力発電は国内外で研究・開発が盛んに行われている。一方、風力発電の大量導入には,電力系統の周波数変動や電圧変動を引き起こす問題があり、これらを抑制する方法として電力補償装置の設置が考えられる。本研究室では、サイリスタインバータを用いた小規模風力・太陽光ハイブリッド発電について種々な検討が行われている。本システムのサイリスタインバータの転流には、同期調相機が必要となるが、これを電力補償装置として用いたシステムの提案がされている。本研究では、小規模風力・太陽光ハイブリッド発電システムの供試装置の製作を行う。
図3.小規模風力・太陽光ハイブリッド発電システムの構成図
 図4(a)は同期機出力線間電圧開ループ駆動時の波形、(b)は同期機出力線間電圧閉ループ駆動時の波形、(c)は同期機界磁電圧波形の一例を示す。同図(a)は負荷投入直後に出力線間電圧が低下しているが、(b)(c)では負荷投入直後に出力線間電圧が低下するものの、界磁電圧が自動で制御されることにより再び出力線間電圧を一定にしていることが分かる。
図4.開ループ駆動時の同期機出力線間電圧(a)及び閉ループ駆動時の同期機出力線間電圧(b)並びに界磁電圧(c)
 

 本研究では、12パルス方式の直流送電システムを対象とした高調波除去法について検討を行った。その結果、同期機の初期過渡インダクタンスを負の等価インダクタンスで打ち消すことのできる特殊変圧器を用いることにより、本システムの高調波除去が確認できた。以上より、6,12パルス方式双方において、特殊変圧器が有用であることが判明した。
 小規模風力・太陽光ハイブリッド発電システムの供試装置の製作の一部として,出力電圧一定制御系に関する検討を行った。その結果,界磁巻線降圧チョッパ回路を用いた本制御装置により出力線間電圧をほぼ一定に保てると判明した。

 



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