近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


ボルテックス・マグナス水力発電装置のブレード設計に関する検討
Considerations of Blades Design for a Hydro-Generator System with Magnus Effect in Vortex Flow
 
はじめに

水力発電のうち、発電量が30[MW]以下のものを中小水力発電といい、世界各国のエネルギー賦存量は150200[GW]と推計されている。しかしながら、実際に導入されているものはその僅か5 [%]のみである。本研究では、大掛かりな土木工事が必要となる都市部の中小水力発電に対し、これを必要とせずに設置・利用できる新しいタイプの中小水力発電装置として、図1に示すマグナス効果(一様な流体中の回転体に揚力が発生する現象)と渦の効果を利用した、ボルテックス・マグナス水力発電装置を提案し、開発を行う。

図1. マグナス効果
 ボルテックス・マグナス水力発電装置
 2にマグナス効果と渦の効果を利用するボルテックス・マグナス水力発電装置の構成を示す。本装置は、マグナス効果により揚力を得る「マグナスブレード」、また、これを有する「マグナスタービン・発電機」、ブレード駆動用の「電動機」及び渦を発生させる「水槽」などで構成されている。先行研究において、マグナスブレードに斜め後ろ方向から水を流入させることによって、マグナスタービンのトルクが大幅に増加することが明らかとなっている。本研究では、渦を用いて斜め後ろ方向からの水流を作り出す方式について検討を行う。
図2. 提案ボルテックス・マグナス水力発電装置
 ブレードの設計に必要となる渦の解析

 マグナス効果を有効に利用するためには、ブレード設計だけでなく、渦そのものの解析が重要となる。そこで、渦の解析としてまず、流速及び流入角度の計測を行うこととした。製作した計測装置を用いて、水槽各点の流速を計測した結果の一例を図3に示す。同図は、水槽内部の渦の流速分布を示したものである。図中の3軸は、水槽の中心からの半径r[mm]水槽底部からの高さh[mm]及び流速Vp[m/s]を示したものである。図より、渦の中心及び水槽底部に近づくほど、流速が速くなることがわかる。また、渦の流入角度について検討した結果、水槽内に発生する渦では斜め後ろ方向の流入が非常に狭い範囲でしか得られないことが明らかとなった。

 
図3. 渦の流速の計測結果
ブレード設計に関する検討
 渦の計測結果から、ブレードの配置位置及び形状に関する検討を行う。種々な水槽内部の渦の状態を計測した結果、ブレードの配置位置については、流速が速くなる中層域が適していること、ブレード形状については、先行研究において判明している、ブレード回転速度を流速の2倍にすることで揚力の方向をタービン回転方向に向けることが可能であるという関係や水槽壁面付近の流入角度が小さいことから、本装置においては図4に示すような円錐型が適していることなどが考察できる
図4. 円錐型のマグナスタービン
おわりに

本研究では、ボルテックス・マグナス水力発電装置のブレード設計に関する検討を行った。その結果、マグナスブレードの出力改善に適したブレード形状は円錐型であること、またタービンの出力改善に適した水流は、水槽内の一部でしか発生しないことなどが明らかとなった。




Copyright 2007 Salesian Polytechnic, All Rights Reserved..