図3 供試太陽熱焦熱装置
測定結果を図4に示す。図より,10月2日に行った測定結果では9分間で70℃の温度上昇が見られ,10月6日の測定結果では16分間で60℃の温度上昇,10月18日の測定結果では一度6分間で50℃の温度上昇が見られるものの,雲がかり温度が減少した。
なお,9分間で70℃の温度差を得られたときの熱量は10.5kcalとなり,温度差70℃のスターリングエンジンの熱効率を約74%と仮定すると,供試焦熱装置の出力は約60[W]となることがわかった。
今回行った設計方法により目標値を満足する焦熱装置を作ることは可能であるが,常に太陽を追尾することが絶対条件であり,雲などの影響により大幅に性能が低下することが明らかとなった。
図4 供試太陽熱焦熱装置を用いた
温度変化の測定結果
本研究室では太陽熱の利用方法の一つとして駆動源に太陽熱を利用したハイブリッド電気推進船を提案する。同システムは,図1に示すように太陽熱焦熱装置,メインエンジン(スターリングエンジン1等),軸発電(電動)システム2等で構成される。
本研究における太陽熱焦熱装置として,省スペースで多くの熱量を得ることのできるパラボラ形状のタワートップ式焦熱装置(焦熱部周辺に鏡を設置し頂点で焦熱する)を検討の対象とした。図2に焦熱装置の設計に必要となる太陽熱焦点位置と鏡位置の相互関係を示す。
実験結果を踏まえて試作一号機を製作した。
供試装置からの改善点として
・マグナス効果を増大させるために
ブレードを三本に増やし,
ブレードの径を大きくした。(図5)
・内部シャフトの損失をなくすために,
ブレード駆動用モータを防水加工し下部に配置した。
但し,T:焦熱部の温度,N:鏡の枚数,T0:外気温とする。
但し,ln:中心点cから鏡までの距離,αn:鏡角度,
h:地上から焦点までの高さ,A:鏡の長さとし,ln,αnは鏡の段数によって値が異なるため添え字nで鏡の段数を表している(n=1,2,3…)。
また,気温26℃において232[mm]×172[mm]の鏡による温度上昇を測定すると,一例として(2)式の関係が得られた(照度など気象条件により大幅に変化すると思われる。現在検討中)。
・・・(1)
同システムは,太陽熱で駆動するスターリングエンジン等の出力を船舶の推進力とするだけでなく,同シャフト上に取り付けられた軸発電システムの駆動源として利用するものである。船舶停止時にはスターリングエンジン等の余剰エネルギーを利用し発電を行う。また,スターリングエンジンの出力が低下し推進力が不足する場合には軸発電機を軸電動機として駆動しこれを補助する。同装置は,洋上における大型船(タンカー等)に利用できるものと考えられる。
1スターリングエンジンとは,空気の膨張・圧縮運動を繰り返してピストンを作動させる外燃機関である。
2軸発電システムとは,メインエンジンとスクリューを結ぶシャフト上に取り付けられた発電電動機により船舶内に電力を供給する装置である。
図1 太陽熱を利用したハイブリッド電気推進船
(b) 提案システムの主要設備
・同システムによる発電性能等について検討する。
・気象条件として照度をパラメータに同様な検討を行う。
・・・(2)
各鏡に入射する太陽光線を焦点に集めるためには,適切な鏡角度αn並びに中心から鏡までの距離 ln を算出する必要がある。この関係は図2を基に次式で表される。
表1 供試太陽熱焦熱装置の仕様
(a) 提案システムの全体図
製作した供試太陽熱焦熱装置を用いて150[ml]の水を加熱し,温度変化の測定を行った。測定条件は以下の通りである。なお,測定前の水温は測定時の外気温と等しくした。
図2 太陽熱焦点位置と鏡位置の相互関係
10月2日(外気温:25℃,条件:快晴)
10月6日(外気温:24℃,条件:薄雲がかった晴れ)
10月18日(外気温:28℃,条件:晴れのち曇り)