近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


 タービン出力の概算から,出力の向上には流速の増加が効果的であることがわかった。そこで流速を向上させる効果をもつレデューサー及びディフューザー(図3)を付与した装置が既に提案されている。レデューサーには入り口と出口の面積比に応じて流速を増加させる効果があり,ディフューザーには内部の流体を吸い出すような吸い出し管効果がある。図4はこれらの装置の増速効果を風洞で測定した結果である。実験は面積比4:1 の供試装置を用いて行った。図よりレデューサーの増速効果は面積比となる4 倍に達していないことがわかる。これは,出口部分の圧力低下に基因する流入抵抗が原因であり,レデューサーのみでは理論的な増速効果は得られないことが判明した。また,図よりディフューザーみの増速効果もあまり期待できないことがわかる。しかしながら,レデューサーとディフューザーを組み合わせた場合にはこれらを単体で用いる場合と比べて,大きな増速効果を得られることがわかった。これは,流速の増加による圧力低下を出口にかけ回復させることにより流入抵抗を軽減しているためであると考えられる。

レデューサー及びディフューザーについて

図1 マグナス効果の概念図

 図2にマグナス波力発電装置の構成を示す。本装置は,発電機を収める浮体 部と流体から動力を得るタービン部とで構成される。タービン部のブレードは円筒状になっておりマグナス効果を得られるようモータによって回転する構造となっている。図示の方向にブレードが回転している状態で浮体が波により上方に移動すると,ブレードには相対的な水流が作用し,図示の方向に揚力が生ずる。この揚力により,タービンが回転し,発電機が駆動することとなる。一方,浮体が下降する場合には相対的な水流の向きは逆向きとなるが,ブレード自体の回転方向も逆向きとすることにより,常に同一方向の揚力を得ることができる。
マグナス波力発電装置の動作原理
 本研究室では再生可能エネルギーの内の一つである波力エネルギーに着目し,「波の上下運動」と「マグナス効果」を利用した新しいタイプの波力発電装置を提案している。本研究では,同装置のタービン出力を向上させる方法について検討を行っている。
研究概要
マグナス効果を用いた波力発電装置の出力特性の改善
マグナス効果を用いた波力発電装置の出力特性の改善

図4 レデューサー及びディフューザーの増速効果

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図3 レデューサー及びディフューザー

 マグナス効果とは,粘性を有する一様な流体中に置かれた回転体に揚力が生ずる現象である。図1にマグナス 効果の概念図を示す。図示のように回転体の上方と下方の流速には物体の回転に基因する速度差が生ずる。この流速差はベルヌーイの定理により圧力差を生じさせ,この圧力差による力が揚力となる。

はじめに



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 本装置の機械的な出力であるタービン出力Ptは以下の式で表すものとする。
       

 但し,C
P:出力係数,ρ:流体の密度,Lb:1本分のブレード長さ,VW:流速

ここに例としてCPを理論値最大効率である0.593,Lb
0.2[m]VWを波の平均流速である0.375[m/s]として出力を求めると約2[W]となってしまう。そこで式に注目すると,出力は流速の3乗に比例して増加することがわかる。従って出力を向上させるために流速の増加が必要となってくる。
タービン出力について

 今後の課題としては,発電機を搭載した供試装置を製作しトルクとタービン回転数の特性を明らかとすること等が挙げられる。

今後の課題

実験結果を踏まえて試作一号機を製作した。
供試装置からの改善点として
・マグナス効果を増大させるために
 ブレードを三本に増やし,
 ブレードの径を大きくした。(図5)
・内部シャフトの損失をなくすために,
 ブレード駆動用モータを防水加工し下部に配置した。

図2 マグナス波力発電装置の構成図