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年間を通して流量や流向の変動を河川の水流や海流、また規則正しく流向が変動する潮流に着目し、これらの水流ととマグナス効果による揚力を利用して発電する「垂直軸型マグナス水力発電装置」を提案し、研究を行っている。本研究では、垂直軸型マグナス水力発電装置のタービンを安定して回転させることのできるマグナスブレードの回転方向についてタービン始動時並びにタービン駆動時を対象に検討する。
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図1にマグナス効果の原理を示す。流体中に回転体を置くと、図示のように回転体に揚力が生じる現象をマグナス効果という。本提案装置はこのマグナス効果による揚力を利用して発電する。
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図1 マグナス効果の原理
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図2に垂直軸型マグナス水力発電装置の構成を示す。本提案装置のタービンは図示のようなモータにより駆動する円筒を有する。これの円筒のことをマグナスブレードと呼ぶ。回転しているマグナスブレードに水流が流入すると、ブレード自体にマグナス効果による揚力が生じる。この揚力によりタービンが回転して発電機を回転させる。
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図2 垂直軸型マグナス水力発電装置の構成
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本提案装置の特徴:高トルク低回転の為、野生生物への影響が低い・ブレードの回転制御で、システムの停止が容易・上方に電気設備があり、メンテナンスが容易・低流速から起動できる為、利用率が高い・ブレード自体が動く為、ごみや生物の付着が無い |
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マグナスブレードに生じる揚力の方向はマグナスブレードの回転方向により切り換えることができる。
⇒タービンを安定して回転させるためには、適切なブレード位置でマグナスブレードの回転方向を切り換える必要があると考える。
⇒適切なマグナスブレードの回転方向を切り換え位置についてタービンの始動時と駆動時を対象にマグナスブレードの回転方向について検討した。
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・タービン始動時
図3(a)に図2の装置を上部から見た時、マグナスブレードが0°、90°、180°、270°の各ブレード位置にある時の適切な揚力の方向を示す。図となっている。始動時にタービンを安定して回転させるためには、図示の黒矢印の方向に揚力を生じる必要がある。
よって、
始動時はブレード位置が90°と270°の時にマグナスブレードの回転方向を切り換える必要があることが分かる。 |
(a)始動時
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・タービン駆動時
駆動時にマグナスブレードに作用する流速は装置に流入する水流の流速にブレード自体の移動を考慮した相対流速となる。よって、マグナスブレードに作用する相対流速の角度を計算した。図3(b)にタービン駆動時のマグナスブレードの位置と適切な揚力を示す。
図中には
・ブレードの左回転時に生じる揚力の方向(相対流速を基準に90°進相)の緑色のグラフ
・ブレードの右回転時に生じる揚力の方向(相対流速を基準に90°遅相)の赤色のグラフ
・タービンの回転に有効となる揚力の範囲(ピンク色の領域)
を示す。
駆動時はマグナスブレードの生じる揚力の方向をこの範囲内に収まるようにマグナスブレードの回転方向を制御すればよい。
従って、
駆動時もブレード位置が90°と270°の時にマグナスブレードの回転方向を切り換えれば良い。
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(b)駆動時
図3 ブレード位置と適切な揚力の発生方向の関係
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⇒タービンの駆動時も相対流速による影響を考慮せず、始動時と同様のマグナスブレード回転方向制御を用いることができる。
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これらの理論を基に供試マグナス水力発電装置を製作し、実際の河川の流れを利用して装置の動作実験を行った。
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その結果を図4に示す。同図は装置に流入する水流Vw、装置のタービン回転角速度ωt並びに周速比λの応答波形を示す。周速比λとは、装置に流入する水流の流速に対するブレード先端速度の比である。周速比λが変化すると装置に流入する水流の流速を基準としたマグナスブレードに作用する相対流速の角度が変化する。
同図より、
⇒流入する水流に対して、理論の妥当であること。
⇒周速比λにより、マグナスブレードの回転方向を切り換える位置を変更する必要がないこと。
が判明した。
図5は、実際の河川の水流を利用した供試装置の動作実験の様子である。 |
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図4 装置に流入する水流Vwとタービンの回転角速度ωt
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図5 供試マグナス水力発電装置の動作実験の様子 |
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本研究では、垂直軸型マグナス水力発電装置のタービンを安定して回転させるためのマグナスブレードの回転方向に関する検討を行った。その結果、タービン駆動時もタービン始動時と同様のマグナスブレードの回転方向制御に関係なく、ブレード位置が90[deg.]と270[deg.]でマグナスブレードの回転方向を切り換えれば良いことが判明した。 |