近年,燃料の枯渇問題や環境問題等の観点から「再生可能エネルギー」の重要性が高まっている。本研究室では「海洋再生可能エネルギー」を中心に自然エネルギーを利用した発電方法について日夜研究を行っている。


揚水式エネルギー貯蔵設備を有する空中風力タービン装置の開発
Development of an Airborne Wind Turbine with Pumping-up Energy Storage System
研究背景
 近年、環境問題などを背景に世界規模でのエネルギー転換が必要とされ、再生可能エネルギーに注目が集まっている。しかし、再生可能エネルギーは気象条件や季節によって出力が変動しやすいという欠点を持つ。この問題の解決策の一つとして、上空の強い風を利用することのできる空中風力タービンとエネルギー貯蔵装置を組み合わせた、揚水式エネルギー貯蔵設備を有する空中風力タービン装置を提案する。 
高度による風速の変化
 一般的に、高度が高くなると風速も高くなる。また、風力タービン出力は風速の3乗に比例する。高度と風速の関係式及び風力タービンの出力を表す式は、次式となる。
    ・・・(1) 
    ・・・(2)
但し、Vwind:風速、h1:地上付近の任意高度、V1:h1における風速、h:高度、n:地上の状態によって決められるべき指数、Pt:風力タービン出力、Cp:風車のパワー係数、A:風車の受風面積である。以上より、風力タービンを上空で運用することにより、莫大なエネルギーを得ることができると考えられる。図1に、(1)式及び(2)式を用いて計算した、高度によって変化する風速と風力タービン出力のグラフを示す。同図より、ある程度高度が上がって風速の増加が少なくなっても、風力タービン出力の値は伸び続けていることがわかる。以上より、風力タービンを上空で運用することにより、莫大なエネルギーが得ることができると考えられる。  
図1 高度によって変化する風速と風力タービン出力
 
 
提案するシステムの供試装置
 図2に提案する空中風力タービン揚水システムの構成を示す。本システムは図示のように、エアポンプを付与した風力タービンをカイトに懸下し、上空に揚げる構成となっている。空中でエアポンプを駆動し、空気圧で地上のタンク内の水を押し上げ、水の位置エネルギーを貯蔵する。同提案システムは発電機等の重く複雑な機構を上空に揚げることなくエネルギーの貯蔵が可能であると考える。



図2 空中風力タービン揚水システムの構成 
 
 エネルギー貯蔵実験
   
図3 エネルギー貯蔵供試装置の構成   図4 風速によるエネルギー貯蔵量の変化
   
 提案するシステムでエネルギーの貯蔵が可能であるかを確認するため、供試装置を製作し、エネルギー貯蔵実験を行った。図3に製作した供試装置の構成を示す。
 実験は、次のように行った。先ず、直流安定化電源を用いて種々な風速に見合った入力電力でエアポンプを駆動する。水の入ったタンクに空気を送り込み、空気圧で押し上げた水の量をメスシリンダの目盛を読み取る。また、図示のように、ポンプの空気吸入口とメスシリンダの先端を開放した状態をオープンサイクル、これらを接続した状態をクローズドサイクルと呼ぶこととし、エネルギー貯蔵量の比較検討を行った。その結果を図4に示す。同図は風速に対する揚水量を示したものである。同図より、提案する装置によりエネルギー貯蔵が可能であること、また、クローズドサイクルの場合、オープンサイクルと比べて揚水量が2倍以上に増加すること等が判明した。 
むすび
 揚水式エネルギー貯蔵設備を有する空中風力タービン装置を提案し、同装置のエネルギー貯蔵部に関する実験を行った。その結果、同装置による上空の風を利用したエネルギー貯蔵の可能性があると判明した。



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