今回行った実験では時間と天候により多くのデータを得ることができなかった。そのため,一概には言えないが以下のような傾向が見られた。
・無負荷時には負荷時よりもメインシャフトの回転速度が上がるものの,上下速度を変えても出力に大きな変化はみられなかった。
・負荷時には上下移動速度を上げる事によりメインシャフトの回転速度は
上昇した。
・ブレードの回転速度を上げてもメインシャフトの回転速度の上昇には直接つながら
ないと考えられる結果となった。
⇒上下速度やブレードの回転速度の高さによらず最適な条件が存在すると考えられる。
マグナス効果とは一様な流体中に回転する円柱または球体などを置くと,円柱(球体)に一様流体に対して垂直方向の力が加わるという現象である。例えば図1のように,ボールにスピンをかけて投げると,ボールの上側と下側で空気の速度に差ができる。ベルヌーイの定理より,速度が速い方が圧力が下がるため,ボールには図1のように上向きの揚力が働く。
図3 製作した供試装置
(画像をクリックすると動画が再生されます。サーバー負荷低減のためダウンロードしてからご覧ください。)
実験結果を踏まえて試作一号機を製作した。
供試装置からの改善点として
・マグナス効果を増大させるために
ブレードを三本に増やし,
ブレードの径を大きくした。(図5)
・内部シャフトの損失をなくすために,
ブレード駆動用モータを防水加工し下部に配置した。
図4 本システムの概念図
※表示にはFlashPlayer6が必要です。
本研究では波の上下運動とマグナス効果を利用することにより,小さな入力を与えることで大きな出力を得ることができる,新しいタイプの浮体式波力発電装置を提案した。先ず供試装置を製作し,入力と出力について検討を行う。次いで,本システムの動作に必要なエネルギーと,吸収することのできるエネルギーの関係について検討を行う。
・試作一号機に使用する発電機の選定をする。
・制御回路を製作し,上昇運動から下降運動に変わるときに,
ブレード駆動用モータの回転を反転させる制御を行う。
表1 無負荷時の動作実験結果
表2 負荷時の動作実験結果
表3 ブレード回転速度変更時
図3に示した供試装置を使って実験を行った結果,以下の事が判明した。
・入力電力を減らすためには低回転で大きなマグナス効果を発生させる必要がある。
・ブレードの径を大きくすると同じ回転速度でもマグナス効果が増大する。
・内部シャフトの摩擦損失が大きい。
図2に提案する波力発電装置の構成を示す。図示のブレード駆動用モータを回転させると,その回転は内部シャフトを伝わり,かさ歯車を介して左右のブレードを逆方向に回転させる。この状態で海に浮かべると,波の上下運動による,相対的な上下方向の水流が作用する。このときマグナス効果が発生する結果,ブレードにはそれぞれ逆方向の揚力が生じ,この力により外部シャフトを回転させることにより発電するのである。
図1 マグナス効果の例
図6 試作一号機全体図
図5 試作一号機のブレード